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2019/07/22

元銀行員として一言

「銀行というものは必要だけど、今の銀行は要らないよね…」

先日、年配のお客様と食事をしていた時に、その方が悲しそうに仰った。数年前にビル・ゲイツ氏が「将来、銀行は必要なくなる。」と言ったが、どうも現実の事となろうとしている。



ひと昔前は、銀行の各支店一階ロビーは月末や5・10日、納税、給与支払日前後等はごった返していて、下手をすると一時間待ちなんてことも有った。ところが、最近の支店一階は大きなカウンターが取り除かれ、ガランとした所にロボットが用件を聞いていたりする。
支払はインターネットの普及に加え、仮想通貨やEC業者の台頭により、銀行窓口に並ぶ煩わしさなく快適に処理が出来る。これからもフィンテックの進化は加速していき、銀行の決裁業務は少なくとも過去のような専管業務ではなくなっていくはずだ。


預金はどうか?
これも、当面の低金利政策が続く中で、いくら安全とはいえ、資産を定期預金にと考える人は少なくなってきているのではないか。それこそ、仮想通貨や海外FXのようなハイリスク・ハイリターンのものや、原点に立ち戻った金地金や不動産にと考える人も少なくないだろう。預金するよりも、クレジットカードで買い物をしてポイントを貯めた方が、銀行定期預金よりも安全確実に資産を増やせるという考え方さえ出来る世の中だ。


最近のテレビドラマでも、銀行員の大量リストラを題材としたものがあったが、これは現実の事であり、メガバンクの大量リストラや、地銀同士の業務提携等が連日新聞紙面に出ている状況だ。昔は新卒採用のベスト10にメガバンクが軒並み顔を連ねていたが、もはや不人気業種とすら言われている。銀行業務は縮小し、本当に銀行は要らなくなるのだろうか…。


私が元銀行員として最も危機感を抱いているのは、銀行の融資業務だ。


私がいた頃の銀行は、かつて池井戸潤氏の「半沢直樹」、更には幸田真音氏や高杉良氏が描いた金融小説の主人公のように熱い人間ばかりだった。
自分の担当先企業が売上を伸ばす為には、どうしたら良いか?担当先企業が考えている事業を実現させる為に、金融のプロとして何をアドバイスすべきか?その事業を実現させる為に、銀行はどこまで腹を括って融資すべきか?(自分の銀行がメインバンクだったら、下位取引銀行の協調融資が必要かも含め)どうやって貸出稟議を通して、担当先企業の夢を実現させるか?
そんな事ばかり考えていた。金融のプロとしての自覚と志を決して忘れることなく、担当先企業の事業や事業計画には積極的に介入し、時には経営者と大喧嘩したこともある。生産工程のボトルネックを探るために、銀行の渉外活動中につなぎに着替えて旋盤を油まみれになりながら動かしたこともある。なぜ、在庫過多なのか?なぜ、在庫を一般的に健全と言われる財務指標以上に用立てする必要があるのかを理解するために、半日間担当先の冷凍倉庫で営業部長と議論を交わしたこともあった。協調融資が必要な時は、他行の担当者も集めて熱く議論したこともあった。


でも、今の銀行員はどうだろう。
「これは担保なければ無理ですね」「御社は設立1年以内だから、あと半年経ってから来てください」「御社は、在庫が多すぎるから、これ以上貸せません」そんな話ばかり…。確かに、融資・財務分析の基本で言えば、いずれも正解だ。ただ形式や表面の財務指標だけで判断するのは如何なものか。
企業の財務状況を胡麻化すような不健全融資をして、銀行の貸出資産を劣化させろと言っているのではない。もっと金融のプロとして、更に銀行は金融の中核であるとの自覚を持ち、担当先企業を育成・指導していくぐらいの気概がないとダメだ。どこまでリスクテイク出来るか、その裏付けは自身のコンサルティングによる案件の事業性評価を“きちんと”固めることでしかない。保証協会の保証が有れば良いというものではない。
そこまでリーダーシップを発揮して、担当先企業と、その地域の、ひいては日本の経済を「人・もの・金」の中でも「金を回す(融通する)」事で支えていく。単に銀行は金を貸せば良いというものではないはずだ。企業の健全性や将来の事業計画に積極的なコンサルテーションを銀行が行う事で、企業の信頼性が高まり、銀行もリスクテイクしやすくなると考える。難しい事ではない。ひと昔前の銀行がやっていたことだ。

それが、今後銀行が必要と思われるか、要らないと思われるかの岐路とすら思える。悠長に月末残高、期末残高だけに追いかけ回されている暇はないはずだ。低金利だから難しい?担保がない?しっかりリスクテイクして応分の利鞘を取れば良い。
半沢直樹のような”バンカー”が復活することを心より願ってやまない。


板谷